資格試験の勉強法として、教科書や参考書ではなく、「過去問」を解くことに重点をあてたやり方があります。
ITパスポートの試験においても、過去問を使った勉強法は通用するのでしょうか。過去問を解くだけでも果たして合格は狙えるのでしょうか。
今回はITパスポートにおける過去問を使った勉強法について解説します。
また過去問の勉強法の注意点や、向いていない人などについても併せて触れていきます。
ITパスポートのメカニズムを知ろう
ITパスポートの試験は、メカニズムが少々独特です。ここではITパスポートの試験内容、出題方法などについて仕組みを解説します。
試験内容
ITパスポート試験は、以下3つの分野からなり、合計100題が出題されます。
- テクノロジ系(45問程度):IT技術に関する出題
- ストラテジ系(35問程度):ITを用いた経営戦略、ビジネス戦略に関する出題
- マネジメント系(20問程度):ITを用いたマネジメントや管理に関する出題
ITに関する技術的な問題は「テクノロジ系」です。「ストラテジ系」や「マネジメント系」は、ITというよりもビジネス戦略に近い分野となります。
なお、試験方法は、すべてコンピュータ上で回答を行うCBT方式を採用しており、多肢選択式(四肢択一)となります。
出題方法
ITパスポートにおいて、過去試験とまったく同じ問題が出題されることはほとんどありません(全体の2割程度はまったく同じ問題が出題されるとの見解もあります)。
受験する「回」が変われば出題内容が変わります。「IRT(項目応答理論)」と呼ばれる出題方式が採用されており、難易度に補正を掛けながら、毎回ランダムな出題となります。
ただし、まったく同じ問題は出題されないものの、類似した問題は出題されます。
例として、以下は、令和2年度と令和4年度における、自動会話プログラム「チャットボット」に関する出題です。
問49 ある会社ではサービスデスクのサービス向上のために,チャットボットを導入することにした。チャットボットに関する記述として,最も適切なものはどれか。
引用:ITパスポート令和2年秋期 問49
ア.PCでの定型的な入力作業を,ソフトウェアのロボットによって代替することができる仕組み
イ.人の会話の言葉を聞き取り,リアルタイムに文字に変換する仕組み
ウ.頻繁に寄せられる質問とそれに対する回答をまとめておき,利用者が自分で検索できる仕組み
エ.文字や音声による問合せ内容に対して,会話形式でリアルタイムに自動応答する仕組み
正解は「エ」
問49 ITサービスの利用者からの問合せに自動応答で対応するために,チャットボットを導入することにした。このようにチャットボットによる自動化が有効な管理プロセスとして,最も適切なものはどれか。
引用:ITパスポート令和4年春期 問49
ア.インシデント管理
イ.構成管理
ウ.変更管理
エ.問題管理
正解は「ア」
ご覧のように、令和2年度、令和4年度どちらの試験でもチャットボットに関する出題があります。ただし、まったく同じ問題ではなく、質問の切り口が変わっています。
いずれにしてもチャットボットがどういったモノであるかを理解していれば解くことができます。
つまり過去問を丸暗記するのではなく、IT知識を理解することがITパスポートの勉強をする上での大きなポイントとなります。
ITパスポートは過去問だけ解けば合格できる?
ITパスポートは、参考書は読まず、過去問を解くだけで合格を狙えるのでしょうか。結論からいえば、基礎的なIT知識がある人であれば、過去問を解くだけでもITパスポートの合格を狙うことが可能です。
ここでは過去問の勉強方法や勉強量について解説します。
過去問を使った勉強法について
勉強法としては、過去問を解き、答え合わせをし、問われている技術について理解を深めます。これを繰り返していきます。反復学習が重要なため、同じ問題でも繰り返し解くことが望ましいです(とくに苦手な分野など)。
また、正解のワードだけ確認するのではなく、不正解のワードについても意味を調べ理解しておくことが大切です。
たとえば、以下はゲーム機のソフトウェアに関する出題です。
問3 ゲーム機,家電製品などに搭載されている,ハードウェアの基本的な制御を行うためのソフトウェアはどれか。
引用:ITパスポート令和4年春期 問3
ア.グループウェア
イ.シェアウェア
ウ.ファームウェア
エ.ミドルウェア
正解は「ウ」
正解となる「ファームウェア」だけでなく、不正解となるグループウェア、シェアウェア、ミドルウェアもIT業界では多用するワードであるため、意味を知っておくことが大切です。そうすれば、いずれグループウェアやシェアウェアに関する出題があった場合に、対応することができるのです。
過去問の勉強量
過去問だけで合格を目指す場合、最低でも直近過去3回分の過去問を解くことが望ましいといわれています。
問題数としては、1回あたり100問、それを過去3回分×春と秋あわせて計600問が目安となります。過去問を600問解き「8割程度」正解できれば、合格できる可能性が高いといわれています。
ただし、内容を理解することが目的であるため、数をこなすことだけが目的とならないよう注意してください。
過去問はどこで見れる?
過去問は、ITパスポート公式サイトにて、問題冊子&回答をPDFファイルで公開されています。
IT初心者は過去問を解くだけでは不十分であることも
まったくのIT初心者や未経験者の場合、過去問を解くだけでは合格できないことがあります。
ここでは過去問を使った勉強法の注意点、また正攻法について解説します。
過去問を解くだけで合格がむずかしい人
以下のような人は、過去問を解くだけでは不十分であることがあります。
- 一般的なITワードやITの基礎を知らない人
- 学校や仕事でITに関する技術に一切触れたことがない人
- ビジネス知識の乏しい人 など
たとえば「文系学部出身でITについて一切知らない」「畑違いの職種で働いており、仕事でITやパソコンを使ったことがない」という人ですと、基礎から学んでいく必要があるため、過去問を解く勉強法は不向きです。
反対に「情報系学部出身である」「エンジニアではないが仕事でIT技術を使うことがある」「個人的にITやパソコンは好きで基礎的なIT知識は身に着けている」という人であれば、過去問を解くだけでも合格を狙いやすいといえます。
またITパスポートは、IT技術の知識だけでなく、ビジネス戦略やマネジメント分野の出題も多いです。このため、コンサルタントやマーケティング関連の仕事をしており、ビジネス系の知識が豊富な人も、過去問を解くだけで合格を狙えることがあります。
正攻法となる勉強の仕方は?
正攻法としては、まずは参考書(教科書)を読み、ITに関する基礎知識を「インプット」します。その上で過去問を解き「アウトプット」します。
インプットとアウトプットを交互に繰り返し、反復的に頭に入れていく勉強法が本来の綺麗な形です。IT知識が乏しい初心者の場合は、こちらの勉強法が向いているといえます。
最新技術の出題には対応できないこともがある
IT技術は次々と新しい技術が登場します。
たとえば5GやIoT、ブロックチェーンなど、近年登場した最新技術は過去問を解くだけではカバーできないことがあります。
そうした最新技術の理解を深めるためには、過去問や参考書を見るというよりも、普段からIT技術に関心をもちアンテナを張ることが突破口となります。
試験に受かることだけが目的かを改めて考えてみる
ITパスポートを受けてみようと興味を持ったきっかけは人それぞれだと思いますが、やはり「ITの基礎知識を身に付けたい!」という理由が一番多いのではないでしょうか。
それがきっかけだとした時に、過去問だけを解いて合格できたとしても、果たしてITの基礎知識が身に付いているかが問題となります。
既にある程度の知識を持っていて、会社からの指示等で受けるという場合であれば過去問だけもで十分かもしれません。
しかし、イチから知識を身に付けるという観点では、まずは参考書等から知識を吸収して、アウトプットとして過去問を活用することをオススメします。
過去問だけで勉強するかは自分の知識やスキルを考慮して決めよう
以上、ITパスポートと過去問について紹介しました。
ある程度IT知識がある方であれば、過去問を解くだけで合格できることがあり、勉強時間の短縮を図れることもあります。
ただし過去問を使う勉強法は万人向けではありません。IT知識が乏しい方や、一からしっかりと学んでいきたい方は、参考書と過去問を使い、インプットとアウトプットを組み合わせた正攻法の勉強法を採ったほうが確実でしょう。