国内ではITエンジニアの人手不足が問題となっています。
一方で業界内では「近頃ITエンジニアを目指す人が増えすぎている」「以前にくらべ急増した」などの声も目立つようになりました。実際、トラックドライバーや販売員など畑違いの仕事からITエンジニアになる人も増えています。
今回は未経験エンジニアが増えすぎている現状、理由について解説します。これからITエンジニアへの転職をお考えの方は、ライバルたちの状況を知る上でもぜひご覧ください。
未経験エンジニアが増えすぎている現状
近年、ITエンジニアが職業として注目され、未経験から目指す人が増えました。単に「増えた」ではなく「増えすぎ」とまでいわれることもあります。
特にもともと人気の高かったWEB系エンジニア(WEBエンジニア、WEBプログラマー、WEBデザイナーなど)は志望者がさらに増え、競争率も高まっています。
ここではデータを交えながら、未経験エンジニアが増えている現状について解説します。
トラックドライバーなどから転職する人もいる
日本経済新聞では、以下のようにトラック運転手、スーパーの従業員、幼稚園の教諭など、全くの異業種からITエンジニアを目指す人が増えていることを報じています。
トラック運転手や小売店の販売員など異業種からIT(情報技術)分野に人材が移り始めた。NTTとKDDIは協力してIT未経験者を再教育し、全体で約300人を採用する計画だ。
引用:日本経済新聞 電子版「運転手からエンジニアに、DXで人材移動」
~中略~
アウトソーシングテクノロジーはIT未経験者にウェブ開発やネットワーク構築の手法などを教育して顧客企業へ送り出している。スーパーの従業員や幼稚園の教諭などの異業種から転職を目指す人が増え、4月から3000人規模で未経験者を採用している。
トラック運転手やスーパーの従業員と異なり、ITエンジニアの業務はデスクワークが主体です。専門的なIT技術が必要となり、仕事の進め方や環境も大きく異なります。
畑違いともいえる職種となりますが、それでも未経験から目指す人が急増している驚くべき状況にあります。
元事務職や元営業職も多い
アデコ株式会社のIT、エンジニアリング領域に特化した派遣サービス『Modis』では、未経験からエンジニアに就職・転職した20~50代男女500名を対象に、「未経験からのエンジニア転職」と題したアンケートを実施しています。
このアンケート内での「エンジニアへ転職する前は、どのような職種の仕事をしていましたか?」の問いに対しての回答は、以下のような結果となっています。
事務・オフィス・・・21%
営業・・・20%
販売・・・13%
工場・製造・・11%
専門職・・・10%
サービス・・・10%
WEBクリエイター・・・8%
ご覧のように、「事務・オフィス」「営業」「販売」など、いわゆる「文系職種」といわれる職種の人が割合として上位を占めている状況です。
ITエンジニアというと理系のイメージも強いですが、意外にも文系職種出身者からの注目度が高いという結果となっています。
なぜ未経験エンジニアが増えすぎているのか?
ITエンジニアは「キツイ」といわれ敬遠されていた時期もありましたが、なぜ最近になって目指す人が急増しているのでしょう。
ここでは未経験エンジニアが増加している理由や背景について解説します。
理由1.未経験採用の推進
日本ではまだまだITエンジニアが圧倒的に足りず、人手不足は年々深刻化しています。足りない人手をどうにか埋めるため、多くのIT企業が未経験者の採用を積極的に行うようになり、その風潮は業界全体に広がっていきました。
それに合わせ、人材紹介サービスや転職サイトなども、セミナー、SNS、WEB広告、インフルエンサー等さまざまな媒体を利用し、「ITエンジニアが不足している」「未経験でもなりやすい」といった宣伝アピールを積極的にするようになりました。
こうした取り組みの結果、それまでITエンジニアに関心がなかった層までプロモーションが行き届き、さまざまな業界からITエンジニアを目指す人が増えたと考えられます。
理由2.教育が充実したため
「職業訓練」や「ITスクール」など、ITエンジニアについて学べる教育の場が増えたことも、未経験エンジニア増加に影響していると考えられます。
ハローワークが実施する職業訓練(ハローワークトレーニング)では、近年「システムエンジニアコース」「プログラマーコース」「WEBデザイナーコース」などが用意されるようになり、異業種出身の方でもITやプログラミングについて基礎を学べるようになりました。
民間の「ITスクール」「プログラミングスクール」などもスクール数、受講者数とも年々増えています。就職斡旋制度のあるスクールもあり、ITスクールで基礎を学び、卒業時にスクールの斡旋で未経験就職を成功させる人も少なくありません。
理由3.AIやロボットの普及による将来への不安
近い将来、多くの仕事がAIやロボットに代替され、奪われるといわれています。
特に以下のような職業は、AIやロボットへの代替が早くに行われると考えられています。
- 事務職
- 販売職
- ドライバー職
- 工場作業員 など
「20年後30年後に今勤めている仕事がなくなるかもしれない」「将来を考えてIT業界で手に職をつけたい」などと考え、ITエンジニアを目指す未経験者も増えているようです。
ただしIT業界においても、プログラミング作業、デバッグ作業、運用保守作業といった機械化しやすい仕事は、AIに代替される可能性が高いと考えられていますので、頭に入れておく必要があるでしょう。
理由4.新型コロナによる社会情勢の変化
新型コロナウィルスの蔓延により、多くの業界や職業が打撃をうけ、コロナ解雇やコロナ倒産が続出した業種もあります。また、テレワークやリモートワークが普及し、働き方という面でも大きな変化が起きました。
そうした中、「これまでの仕事が続けられなくなってしまった」「リモートワークとの相性のよいITエンジニアに興味をもった」等の理由で、次の転職先としてITエンジニアを選ぶ人が増えたことも関係しています。
未経験エンジニアが増えすぎているけれど、今から転職しても間に合う?
未経験エンジニアは増えていますが、結論からいえばまだまだ枠はあり、今からでも未経験で転職する余地は十分にあります。
データとして、『doda』が公表する「転職求人倍率レポート(2022年12月)」によれば「エンジニア(IT・通信)」の求人倍率は12.09倍という驚異的な値となっており、エンジニアの奪い合いが加熱しています。
未経験エンジニアは増えていますが、それ以上にITエンジニア不足が深刻な状況であり、カバーできていない状況です。それほどまでに今の日本では、IT人材が足りていないのです。
求人サイトをみても、経験者向け求人はもちろん、未経験向けのITエンジニア求人も溢れているのが現状です。埋まらずに常に掲載されている求人もありますので、まだまだ入口はたくさん用意されています。
ただしライバルも強敵になってきている
最近はITについて学ぶ場が増えたため、未経験の中にも職業訓練卒業者やITスクール卒業者が目立つようになり、まったく知識ゼロという人は減ってきています。
そのため選考において、自分は知識ゼロ、もう一人の求職者が職業訓練を卒業してきた人であれば、自分側が不利になってしまうことがあります。選考を突破するには、より自分を上手くアピールしていく必要があります。
もしも不安な場合は、キャリアアドバイザーに相談してみるのも手です。キャリアアドバイザーは面接対策なども行ってくれますので、自分のアピールポイントや、上手くアピールする方法が見つかることもあります。
また時間に余裕がある方は、独学でも問題ありませんので、できるだけ知識を身に着け、さらにいえば技術を形にし「ポートフォリオ」を作っておくと、未経験での就職では心強いアピール要素となります。
まだまだ売り手市場なのでチャレンジする価値あり
以上、未経験エンジニアが増えすぎている現状について解説しました。
たしかに最近未経験エンジニアが増えてきてはいますが、まだまだ人手不足は解消しておらず、求職者側が有利となる「売り手市場」な状況です。
下手に不安視するよりも、むしろ「自分と同じように未経験から転職する仲間が多い」とポジティブに考えてみたほうよいかもしれません。ITとはまったく縁のない職種から転職を成功させる人もいますので、意欲のある人は臆せずチャレンジしてみてはいかがでしょう。