会社組織の枠に縛られず、自分のスキルを武器に自由に働ける「フリーランスプログラマー」。フリーランスの形態に憧れを抱いている方も多いのではないでしょうか。
それでは、プログラミングを始めて間もない初心者であっても、フリーランスとして働くことは可能なのでしょうか。仕事はそもそも受注できるものなのでしょうか。
今回は、初心者がフリーランスとして独立する上での実情や、またフリーランス特有の注意点についても触れていきます。
プログラミング初心者におけるフリーランスの実情
プログラミング初心者がフリーランスとして働く場合、どのような状況が待ち受けているのでしょう。
ここではフリーランスの実情について解説します。
プログラマーはフリーランスとして活動しやすい
まずプログラマーは、他業種に比べフリーランスとして活動しやすい職種です。
データとして、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が発行する「フリーランス白書2022」によれば、フリーランス人材における「主な収入源となっている職種」の上位割合は次のように報告されています。
1位:クリエイティブ・Web・フォト系 20.2%
2位:エンジニア・技術開発系が17.2%
3位:通訳翻訳系 11.1%
4位:出版・メディア系 9.5%
5位:コンサルティング系 8.6%
プログラマーは、上位1位「クリエイティブ・Web・フォト系」もしくは2位の「エンジニア・技術開発系」に分類されます。
また、経済産業省が公表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によれば、2030年には約79万人ものIT人材が不足する見通しが立てられています(上位シナリオ)。
既に現在進行形でプログラマーなどのIT人材が不足しており、仕事が溢れています。
自社のみで対応できず、フリーランス向けに仕事を外注する企業も増えているため、プログラマーはフリーランスとして活動しやすい職種となっています。
初心者でもフリーランスとして活動はできる
プログラマーは独立する上で特定の資格や免許が必要な職種ではありません。したがって経験年数やスキル問わず、誰であっても独立しフリーランスを名乗ることが可能です。
実際に「新卒フリーランス」や「未経験フリーランス」として、プログラマーとしての就業経験や実務経験がないまま、フリーランスとして活動するプログラマーもいます。
ただし、現在会社員の場合で、自社の「就業規則」により、副業やフリーランスでの活動が禁じられている場合はNGです。
就業規則は会社員として必ず守る必要があり、守らなかった場合、戒告や減給、解雇などの重い処分が下されてしまう可能性があります。
初心者の実情は厳しい
プログラミング初心者でもフリーランスを名乗り活動することは可能ですが、実際に仕事を受注し、それで生計を成り立たせるというのは簡単ではないのが現実です。
というのも、プログラミングというのはスキル差や経験差が生じやすい分野であり、品質という面でも、開発時の擦り合わせという面でも、できれば経験のある熟練者にお願いしたいというのが発注する企業側の心情です。
とくに大規模システムに組み込むような重要度の高いプログラムの場合、外注自体がリスクが高くなるため、フリーランスに依頼する場合は必要以上に信頼がある人でないと避けられることがあります。
そうしたことから、実績のない初心者では、フリーランス同士の案件獲得競争に破れやすく、人によっては仕事がまったく受注できないこともあります。
初心者でも受注できる仕事もある
一方で、プログラミング初心者でも受注できる仕事はあります。主に下記のような仕事です。
・Web制作
・簡易プログラム作成
・テストやデバッグ など
Web制作の仕事には、たとえばホームページ制作、WEBデザインの修正などがあります。「HTML」「CSS」「PHP」等の基礎が理解できていれば対応できる案件も多く、実務未経験者であっても応募可能としている案件も少なくありません。
簡易プログラム作成については、たとえば商品データの収集プログラムの作成、簡易ブックマークレットの作成などが挙げられ、こういった案件も初心者が応募可能であることが多いです。
初心者向けの仕事はクラウドソーシングサービスなどを活用すると手軽に受注することができます。単価が低いことが多いですが、実績作りとして挑戦してみるのもアリでしょう。
プログラミング初心者がフリーランスで活動する上での注意点
フリーランスの働き方は、会社員と異なる部分も多いです。助けてくれる会社や上司もいないため、正しく理解しておかないとのちのち自分の首をしめることにもなりかねません。
ここではフリーランスプログラマーならではの注意点や覚えておくべき点を解説します。
契約形態を知る
ややこしい部分ですが、フリーランスとして活動する上では「契約形態」をよく理解しておく必要があります。
システム開発における契約形態には、主に「準委任契約」「派遣契約」「請負契約」の3つがあります。
準委任契約(SES契約):成果物ではなく委託内容に対して規定の時間業務に従事することに責任がある、指揮権はクライアントではなく間に入るベンダー企業にある。
派遣契約:成果物ではなく委託内容に対して規定の時間業務に従事することに責任がある、指揮権はクライアント企業にある。
請負契約:成果物に対して責任があり、指定された水準、期日で完成させ、納品する義務がある。
フリーランスのプログラマーの場合は、3つ目の「請負契約」での契約となることが多いです。請負契約の場合、会社員のプログラマーのように、既定の時間働く義務はありませんが、その分、成果物(プログラム)に対する責任が大きくなります。
成果物が完成できなかったり欠陥があったりすると、請負契約の場合は報酬が発生しないこともあり、場合によっては修正やトラブル対応を行わなくてはならないこともあります。
つまり、成果物をシビアに見られ、スキルをシビアに見られることにもなりますので、プログラミング初心者にとっては酷な部分もあります。
フリーランスは助けてくれる存在がいない
会社員のプログラマーであれば、通常、同じ会社の社員同士でチームを組み、その中で役割分担して仕事をすすめます。
このため、まだ入社したばかりの新人プログラマーにはそれに見合った仕事が分け与えられ、わからない部分があったり、進捗が遅れていたりすれば、周囲の先輩プログラマーなどがフォローに入り助けてくれることもあります。
フリーランスの場合は、このような組織体制から外れるため、自分一人の力で考え、仕事をこなし、トラブルや問題があっても自分で解決しなければなりません。
社内研修や教育制度などももちろんないため、知識の習得やスキルアップも自力で行うことになります。
収入を考える上での注意点
フリーランスの場合、同じ仕事であっても会社員より月の収入額が高くなることが多いです。月50万円以上稼げる案件も目立ち、プロフェッショナル向けのものでは月100万円以上稼げる案件もあります。
ただしフリーランスの場合、会社員であれば本来用意されている、以下のような恩恵がカットされています。
・厚生年金
・退職金
・ボーナス
・各種手当(住宅手当、家族手当、資格手当など)
・福利厚生制度 など
厚生年金や退職金などは、老後生活にも影響してきますので、フリーランスの収入額については、目先の金額だけでなく、総合的な収入として考えることも大切です。
まずは会社員として経験を積んでみるのも
プログラミング初心者であっても、フリーランスとして活動することは可能ですが、初心者がいきなりフリーランスとして働くことにはリスキーな部分も多く、生計が立てられなくなる恐れもあります。
プログラマーはスキルや経験が強く問われるため、初心者の場合は急いでフリーランスとして独立するよりも、まずはプログラマーとして企業に就職し、会社組織の中でスキルを培っていくほうが賢明ともいえます。
スキルを積んでからいずれ会社を辞め、フリーランスになることにはなんら問題はありません。本来フリーランスというのは経験を積んでからなるのが自然であるともいえます。
未経験であってもプログラマーとして雇してくれる企業、将来の独立を前提として雇用してくれる企業などもありますので、不安な方はその道のプロである転職アドバイザーに相談してみるのもおすすめです。
フリーランスとして独立するかは慎重に考えよう
以上、プログラミング初心者におけるフリーランス事情について紹介しました。
フリーランスは会社組織に縛られないため、人によってはそれが大きなメリットとなり、高い満足度を得られることもあります。ただし同時に、会社組織の恩恵を受けられなくなるため、会社員以上にストイックな日々となることもありえます。
そのようにフリーランスは一長一短でもあるため、独立する前に、本当にフリーランスで働くべきなのかを慎重に考えた上で独立を検討することをおすすめします。