ITエンジニアの仕事は大勢のメンバーたちと進めるため、「コミュニケーション力が必要」といわれることがあります。それでは対人関係の苦手な「コミュ障」の人ではITエンジニアにはなれないのでしょうか。
今回はITエンジニアとコミュ障の関係や実情について解説します。
意味を理解しよう、IT業界でいうコミュニケーション力とは?
まず、「コミュニケーション力」という言葉は意味が広く、その場所によって捉え方が変わることがあります。IT業界においても、他業界とは異なるIT業界ならではのコミュニケーション力が求められます。
コミュニケーション力とは?
「コミュニケーション」の言葉の由来になっているのは、ラテン語の「コミュニス(communis)」という、「共有、共通」、「疎通を良くする」を意味する言葉です。つまり相手との意思の共有や意思の疎通をスムーズに行える能力がコミュニケーション力です。
次に「コミュ障」というのは、コミュニケーションや対人関係が苦手な人を指す言葉です。インターネット掲示板やSNSで使われはじめたスラング的な言葉であり、緊張して相手と上手くしゃべれない、一方的に話してしまうなどの傾向がある人が、コミュ障と扱われることが多いです。
IIT業界でいうコミュニケーション力とは?
IT業界でいうコミュニケーション力というのは、シンプルにいえば「大勢の人たちとシステムを作り上げる上での意思疎通力」です。
コミュニケーション力というと、誰とでも笑顔で接することができる、話が上手い、場を盛り上げられるなどをイメージする方もいるかもしれませんが、そういったコミュニケーション力が重視されるのは、接客業や営業職など外交的な職種の場合です。
IT業界やITエンジニアの場合は、システムを作り上げるという一つの目的を共有した多くのメンバー(プロジェクトメンバー、チームメンバー、クライアントなど)と上手く意思疎通できるかが重要であり、そのための能力がコミュニケーション力となります。
コミュ障でも大丈夫?
たとえ笑顔で話すのが苦手な人や、面白い話などが苦手な人であっても、システムを作り上げるという意思をもち、そのために必要な意思疎通や情報交換を行い、周囲と協力しなが働ける人であれば、ITエンジニアの仕事は務まります。
普段は口数が少ない人であっても、システム開発に対して情熱があり、「サーバーの仕様はどうするべきか」「他のチームではこういった要望があるがこうするべきではないだろうか」など、必要な部分の意思疎通や調整が的確にできる人であれば、自然と周囲にそれは伝わり、むしろ一目置かれる人物となることもあります。
反対にいくら笑顔をふりまき、誰とでも仲良くなれるようなタイプの人であっても、システムを作る上での対話がスムーズに行えない人はIT業界では嫌気されやすいでしょう。
ITエンジニアとして重要になる4つのコミュニケーション力
ここでは、ITエンジニアとして特に重要となる以下4つのコミュニケーション力について深堀して解説します。
- 大勢の意見を聞き調整する力
- 論理的に伝える力
- 長く良好な関係を作る力
- リーダーシップ
大勢の意見を聞き調整する力
ITシステムの開発は、たくさんのエンジニアが集まり、プロジェクトやチームを組んで進めるのが一般的です。
たとえば自分がサーバーの設計を担当するサーバーエンジニアであっても、一人で黙々とサーバーの設計を進めていればよいというわけではありません。
設計をする上では、ネットワークチーム、データベースチーム、プログラミングチームなど、他のチームのメンバーと会話をし、お互いの要望などを擦り合わせる必要があります。
周りの意見や要望をしっかりと汲み取った上で、自分側の要望も伝え、調整していく力が求められます。将来的にチームリーダーやプロジェクトリーダーなど管理するポジションに立つと、そういった調整の仕事がより多くなります。
論理的に伝える力
ITエンジニアは「論理的思考力」が問われる職種です。論理的思考力は、自分の意見を伝え、コミュニケーションを取る場面においても重要になります。
開発現場では、たとえば「開発中のシステムをこのようにすべきではないか」、「発生中の障害にこのように対応するべきではないか」など、さまざまな話し合いが行われています。
それに対し、根拠となるデータ、リスク、課題などを交えながら、論理的な視点で提案し、話し合う必要があります。
根拠を交えずフィーリングで語ったり、その場の勢いでコミュニケーションを取ろうとするような人は嫌気される原因となりかねません。
長く良好な関係を作る力
ITシステムの開発は何年も続くこともあり、その間、同じ顔ぶれのメンバーやクライアントと長く関わっていくこともあります。
そのため、同じ環境で働く固定の相手に対し、良好な関係を長期的に築くコミュニケーション力が問われます。接客業などのように、一期一会の不特定の相手との短期的な付き合いではないため、求められるコミュニケーション力も変わってきます。
たとえ初対面の相手と話すのが苦手という人であっても、一緒に仕事を続けているうちに、周りから好かれ良い関係を築けていけるタイプの人であれば、ITエンジニアとして活躍しやすいでしょう。
リーダーシップ
ITエンジニアは、いつまでも現場の技術者を続ける人ばかりではありません。経験を重ねるとチームリーダーやプロジェクトリーダーなど、管理するポジションにステップアップしていくケースも多いです。
そのような管理するポジションに立つと、多くのメンバーたちをまとめ、牽引していく「リーダーシップ」の力が求められます。
リーダーシップにはさまざまなタイプがあります。話がうまく、周りを巻き込む勢いのある、典型的なリーダータイプの人だけが活躍するとは限りません。
とくにIT業界の場合は、周囲のメンバーと同じ視点にたち、冷静に周囲を見渡しまとめていく、静かなリーダータイプの人が活躍しているケースも多いです。
コミュ障の人が注意したい点
最後に、コミュ障の方がITエンジニアになる上で注意したい点について解説します。
注意点1:「コミュ障だからITエンジニアになろう」は注意
「ITエンジニアはパソコンと睨み合っている仕事だからコミュ障でも大丈夫そう」のようなイメージを抱きITエンジニアを目指す人も一部います。
ここまで解説したように、ITエンジニアという仕事は、一人だけで進められるものではありません。また将来的に担当するプロジェクトが変わったり、リーダーポジションを任されたりすれば、パソコンと睨み合うよりも、人との関わりや調整がメインとなることもありえます。
そのためコミュ障だからITエンジニアになろうという考え方はとても危険です。ITへの情熱、学習意欲なども重要になる職種であるため、そのような消去法的な考えではモチベーションを維持することも困難になるでしょう。
注意点2:あまりにコミュニケーションに問題がある人は改善が必要
以下のように、あまりにコミュニケーションに問題がある人の場合、たとえ採用されたとしても、後々トラブルを起こす可能性があります。
- 相手の目をみてはなせない
- あまりに言葉数が少ない、声が小さくて聞こえない
- 言葉のキャッチボールができない、自分の言いたいことだけを語っている
- 表情や感情があまりに欠落している など
IT業界で求められるコミュニケーション力は、他の業界とは異なる部分もありますが、だからといって人同士のコミュニケーションであることには変わりありません。不快感を与えるほどコミュニケーションに問題がある人は、ITエンジニアに限らず改善が必要です。
コミュ障でもITエンジニアになれる
以上のように、コミュ障の人であってもITエンジニアになることは可能です。学生時代などには周りからコミュ障といわれていた人が、ITエンジニアの環境で活躍していることもあります。
面接においても、根底の部分の性格なども見られているため、人と話すのが多少苦手であっても適性ある人であれば採用されることもあります。
ただし、「コミュ障だからITエンジニアにしよう」という考えは避けましょう。そのような考えは面接でも見透かされやすく、採用にさえ至らないこともあります。