Web上やSNS上では「未経験からフリーランスエンジニアになりました」、「新卒でいきなりフリーランスとして働いています」のような情報を見かけることもあります。
さて、まったくの未経験者がフリーランスのITエンジニアとして働けるものなのでしょうか。未経験×フリーランスの仕事事情や、未経験ITエンジニアがフリーランスになる上での注意点について紹介します。
未経験でもフリーランスITエンジニアになれる?
「フリーランス」というのは、企業、組織、団体などに所属せず、個人で仕事を獲得し働くことを指す言葉です。
大変そうなイメージもありますが、未経験の人であっても果たしてなれるものなのでしょうか。
フリーランスを名乗ることは簡単
まず、フリーランスのITエンジニアを「名乗る」ことは簡単で、誰にでもすぐにできます。
フリーランスのエンジニアを名乗るための決まりは特にありません。実務経験、職歴、資格などが法的に問われるわけでもありません。
極端な話ですが、まったくITにすら関わったことのないフリーターや学生などが、「自分はフリーランスのエンジニアとして活動しています」と名乗っても何ら問題はありません。
仕事を獲得するのはむずかしい
フリーランスを名乗り活動することは簡単ですが、仕事を獲得するとなるとグンとハードルが高まります。
というのも、フリーランスとは本来、経験豊富で一人で仕事をこなせるプロフェッショナルな人材が選ぶ道です。フリーランスを雇う側の企業も、特に教育やサポートをしなくとも、一人で成果物を仕上げられるスキルや経験のあるエンジニアを求めています。
とくに基本設計や要件定義といった一定以上のスキルが必要な業務に関しては、実務経験が問われることが大半です。「エンジニアとしての実務経験〇年以上」、「〇〇言語での開発経験〇年以上」のように、経験やスキルを具体的に指定している案件も少なくありません。
こうしたことから、未経験のフリーランスエンジニアが仕事を獲得するのはむずかしいのが実情です。
未経験で獲得できる案件もあり
一方で、未経験のフリーランスエンジニア向けの案件がまったくないわけではありません。
たとえば、以下のような案件は、経験のほとんどない人であっても受注できることがあります。
- 簡単なコーディング
- デバッグ作業
- トラフィック監視や障害監視
- 運用保守 など
ただし、未経験者でも受注できる案件というのは、いってみれば未経験者でもできるレベルの仕事であるため、単価や報酬額は低めであることが多いです。
また未経験といっても、最低限度の基礎知識がないと仕事を獲得するのはむずかしくなります。
たとえばエンジニアとしての職歴はなくても、趣味でプログラミングを行っていた人などであれば、コーディングの仕事に携われることはあります。しかし一切プログラミングを触ったことのない人ですと、簡単なコーディングの仕事であったとしても受注するのはむずかしいでしょう。
未経験でも活動しやすい環境となりつつある
近年は、以下のようなことが追い風となり、未経験のフリーランスエンジニアでも仕事を獲得しやすい環境となってきています。
- 業界全体に広がるITエンジニアの人材不足
- フリーランスの一般化、フリーランスを雇う企業の増加
- クラウドソーシング系のサービスが普及
- フリーランスのITエンジニア向けの仕事紹介サービス、専門エージェントの増加 など
企業と個人がマッチングしやすい環境となってきており、未経験のフリーランスであっても過去に比べれば仕事を受注しやすい時代です。
フリーランスエンジニアになる場合の注意点
フリーランスは組織に属していないため、会社員と勝手が違う部分も多いです。ここではフリーランスのITエンジニアの実情や、なる上で注意したい点を紹介します。
助けてくれる存在がいない
会社員のITエンジニアであれば、よく分からないところがあったり、手一杯で自分一人では対応できない場合などには、同じ会社の上司や先輩などがサポートしてくれます。
フリーランスの場合は、そのような助けてくれる存在はおらず、自分一人の力で成果物を仕上げなければなりません。
担当する案件によっては、フリーランスであっても他の会社のエンジニアとチームを組み、分業や協力をして仕事を進めることもあります。しかし同じ会社の人間同士ではないため、やはり壁のようなものはあります。
思うようにスキルアップできないことも
会社員のエンジニアには研修や教育制度があります。フリーランスのITエンジニアにはそのようなサポートはなく、スキルアップのための勉強をすべて自分の力で行う必要があります。
また会社員のエンジニアであれば、成長を促すため、敢えてこれまで経験したことのない仕事に挑戦させて貰えることもあります。
フリーランスのエンジニアにはそうしたチャンスも少なく、基本的に現在の自分のスキルに見合った仕事を受注する形となります。
フリーランスというと一見は自分の望むような経験を自由に積めるイメージもありますが、逆に枠にとらわれてしまい、スキルアップや成長が上手くできないこともあるのです。
未経験の場合、報酬は低め
フリーランスのITエンジニアの中には、会社員のエンジニアの何倍もの報酬を得ている人もいますが、あくまでそれはベテランのエンジニアの話です。
未経験のフリーランスでも受注できるコーディングやデバッグのような案件の場合、会社員以下の報酬となることもあります。もっといえば、ほとんど仕事が貰えずに、アルバイトや副業程度の報酬にしかならないこともあります。
また、フリーランスのエンジニアの場合、会社員のようにボーナス、家賃補助、厚生年金精度などもありません。
未経験からいきなりフリーランスのエンジニアを目指すのはアリか?
未経験から企業に就職せずにいきなりフリーランスのエンジニアを目指すことは、実際のところアリなのでしょうか。この点について解説します。
リスキーな部分もある
フリーランスのエンジニアになるポピュラーなルートは、まずはエンジニアとして企業に就職し、そこで実務経験、実績、人脈などを作り、ある程度のベテランになってから独立するパターンです。
実務経験を積むことで、IT業界内の事情や、システム開発の進め方など、技術以外の部分も見えてくるため、フリーランスとなったあとも活動が進めやすくなります。
一方、未経験からいきなりフリーランスとなると、そのような本来培うべき経験を飛ばすことになるため、方向性を見失いやすく、リスキーな部分もあります。
未経験からいきなりフリーランスになり成功する人もいますが、成功できなかった場合のリスクも十分考えた上でキャリアを考えることも大切です。
副業から始めてみる
フリーランスの場合、会社員のように決まった収入が保証されているわけではありません。いきなり会社を辞めてフリーランスとなると、仕事が獲得できなかった場合に、生活が成り立たず、路頭に迷う恐れがあります。
そこで、まずは本業ではなく副業から始めて様子を見てみるのも一つの方法です。近年は副業向け、Wワーク向けの案件も少なくないため、疑似的にフリーランスを体験することもできます。一度自分のスキルがどこまで通用するか試した上でフリーランスとなったほうが間違いは減るでしょう。
未経験でもフリーランスになれるがよく考えて決めよう
フリーランスのITエンジニアは、未経験であってもなることは不可能ではありません。
コーディングやデバッグなど未経験でもできる仕事でフリーランスデビューし、ステップアップしていく人もいます。そのようなキャリアが自分にあっているという人もいます。
一方で、「未経験からフリーランスになったが仕事が見つからない」、「生計が立てられず結局就職することになった」というケースなどもありますので、本当にフリーランスでなければいけないのか、フリーランスとしてやっていく覚悟はあるかなどをよく考えて決めることをおすすめします。