変化のスピードの早いIT業界。新型コロナウィルスも依然として収束せず、不安定な社会情勢でもありますが、来年2023年のIT業界やITエンジニアはどうなっていくのでしょう。
今回は2023年のITエンジニアの採用市場やIT技術トレンドの動向の予測を解説します。
2023年以降、IT業界やITエンジニアへ就職、転職を考えている方はぜひご参考ください。
2023年のIT業界の動向は?
まずIT業界全体、ITエンジニアの働く環境全体における動向について、2023年の予測を解説します。
2023年もIT業界は成長する可能性が高い
新型コロナウィルス感染症の拡大、ロシアのウクライナ侵攻、世界的な物価高や歴史的な円安など、2022年は社会情勢や政治経済などに大きな変動がありました。
それにより悪影響を受けた業界もありますが、そのような中でもIT業界は比較的安定的に推移してきた業界です。
T業界内のWeb界隈、とくにWebプラットフォーマーやEC系企業のような企業では、巣篭り需要により、むしろ業績を伸ばした会社も少なくありません。
AIやIoTなどはこれから本格的に普及がはじまっていくため、IT業界全体としてもまだまだ成長の余地があり、引き続き2023年もIT業界やITエンジニアは将来性が明るい可能性が高いです。
2023年にとくに需要が増えそうなITエンジニア職は?
今とくに注目されており、来年2023年以降も需要も増えそうなITエンジニア職として、次のような職種が挙げられます。
- Webエンジニア
- DXエンジニア
- AIエンジニア、データサイエンティスト
- インフラエンジニア(クラウド系)
- ゲーム系エンジニア(スマホゲーム・アプリ系)
- QAエンジニア(品質保証エンジニア)
- マネジメントや人を纏められるスキルのあるエンジニア など
Web系サービス、Webアプリなどは依然として勢いがあるため、Webエンジニアは2023年も引き続き人気の職種となるといわれています。
また、リモートワークを導入する企業が増える中、人事や経理などの業務システムをSaaSに切り替えるケースが増えており、SaaS系のサービスを扱えるWebエンジニアの需要が高まっている傾向もあります。
そして、DX(デジタルトランスフォーメーション)に精通したDXエンジニアも来年2023年は注目される年になるともいわれています。
というのも、経済産業省が「2025年の崖」として警告をしつつ、あらゆる業界の企業にDX推進を強く呼びかけているためです。来年2023年以降にはそれが本格化していき、これまでのように大企業だけでなく、中小企業にも波及していく可能性が高いのです。
DX分野に精通した人材というのもまだまだ少ないため、DXエンジニアは今後さらなる売り手市場となる可能性があります。
そのほか、AI系、クラウド系、ゲーム系の市場も今後も拡大していくことが予想されているため、その分野のエンジニアに対する需要も引き続き高くなることでしょう。
ITエンジニア全般で引き続き人手不足
ITエンジニアは、上記で挙げた職種以外においても、プログラマー、システムエンジニア、ネットワークエンジニア、データベースエンジニアなどさまざまな職種がありますが、全般的に人手が不足しています。
日本国内では、海外に比べるとIT系のエンジニアの人手が圧倒的に足りておらず、人手が欲しくても集まらないIT企業もたくさんあるのが実情です。
経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」では、このままのペースでいけば、2030年にはIT人材が約79万人不足する予測が立てられており(高位シナリオの数値)、すでに現時点でも人手不足は深刻化しています。
人手の絶対数が足りていないことから、未経験者、外国人労働者、シニア人材などを積極的に採用するIT企業すら少なくないため、ITエンジニアである以上は、2023年も引き続き売り手市場が期待できそうです。
海外では雲行きの怪しい動きも
海外では2022年に、テック系企業の株価が軒並み下落したり、GAFAをはじめとする巨大IT企業が大量解雇を進めるなど雲行きの怪しい動きもみえてきています。
ただし海外はもともとIT人材が豊富でありますが、国内ではそもそものIT人材数が足りておらず、また解雇なども簡単にできる国ではないため、海外と日本では事情が少々異なってきます。
2023年のIT技術のトレンドや注目されるスキルは?
毎年新しい技術やテクノロジーが登場してきますが、来年2023年にトレンドとなるIT技術にはどのようなものがあるのでしょう。
ここでは2023年に注目される技術やスキルについて紹介します。
2023年のトレンド技術
2023年には、以下のような技術がトレンドとなる可能性が高いです。
- DX
- メタバース
- NFT
- ブロックチェーン
- UnityやUnreal Engine(ゲームエンジン)
- SaaS
- クラウド
- AR(拡張現実)、VR(仮想現実)
- AI(人口知能)
- データサイエンス
- IoT
2023年は、とくに「メタバース」「NFT」「ブロックチェーン」といった、いわゆるWeb3.0系の技術がより強く注目されることが予想されます。
また、すでに強いトレンドとなっていますが、「AI(人口知能)」「データサイエンス」「IoT」などの分野も引き続き注目が集まり、需要は伸びていくことでしょう。
AIエンジニアやデータサイエンティストは、ITエンジニアの中でも特に人材が少ない分野であり、高度な能力やセンスも求められるため、給料においても今後も高騰化が進んでいく可能性が高いでしょう。
ガートナー社が発表した10つのトップ・トレンド
IT分野で大きな影響力を持つ大手IT調査会社「ガートナー社」は、例年、「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」と題し、最新の注目技術を発表しています。
ここで発表された技術は、その年を表すトレンド技術として、各方面から注目を集めることになります。
そして、2023年の「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」としては、以下10つの技術が選ばれました。
- デジタル免疫システム
- オブザーバビリティの応用
- AI TRiSM(AIの信頼性/リスク/セキュリティ管理)
- インダストリ・クラウド・プラットフォーム
- プラットフォーム・エンジニアリング
- ワイヤレスの高付加価値化
- スーパーアプリ
- アダプティブAI
- メタバース
- 持続可能なテクノロジ
いずれも高度な技術であり、これらに精通する必要はありませんが、IT業界で働くものとして、今どのような技術が注目されているかは概要レべルで把握しておくことが大切です。
いま注目されているプログラミング言語は?
オランダのTIOBEソフトウェアが毎月発表する「TIOBEプログラミングコミュニティーインデックス」(通称「TIOBEインデックス」)。
これは複数の検索エンジンの検索結果のデータを用いて、いま世界でどのプログラミング言語が話題になっているかをランキングとしたものです。
2022年12月の最新ランキングは以下のようになっています。
1位 Python
2位 C言語
3位 C++
4位 Java
5位 C#
6位 VB
7位 JavaScript
8位 SQL
9位 Assembly language
10位 PHP
1位の「Python」は、AI開発、Webアプリ開発まで幅広い分野で利用される言語であり、シンプルな文法で初心者も扱いやすいのが特徴です。
2位以降は、C言語、C++、Javaなどおなじみの有名プログラミング言語がランクインしており、根強い人気があることを物語ります。
2023年以降は、AI、機械学習、データ分析などの分野がより勢いづくともいわれていますので、来年以降も「Python」にはより強い注目が集まる可能性があります。
2023年はITエンジニア志望の学生の就活が「超早期化」している
IT業界では人手不足が続いていますが、同時に水面下では、ITエンジニア志望の新卒学生の就活が「超早期化」している動きがあるようです。
ITエンジニア向け国内最大の転職・就職・学習プラットフォーム「paiza(パイザ)」を運営するpaiza株式会社が実施した、2023年卒の学生向けの就職活動に関する調査レポートによれば、以下の様な傾向が見られたようです。
- 例年就職活動の時期は早期化しており、2023年卒の学生にもその傾向が続いている
- 卒業の2年前(2021年春)ごろから就職活動を開始している学生が約4割、2021年の夏までに開始した学生が6割超
- 企業へのエントリーや応募などの時期も2022年卒の学生に比べ早期化
超早期化の背景には、新型コロナウィルスの影響により内定取り消しなどの動きがあったことで学生たちが危機感を覚えていること、コロナ禍によってオンライン選考が主流となったことなどが関係しているようです。
IT業界全体としては人手不足が深刻化しておりますが、IT業界を目指す若者がいなくなったわけではなく、むしろ新卒の学生たちは早くから将来を考え意欲的に動いているようです。
変化の早い業界だからこそ、いまを知ろう
以上、2023年のITエンジニアの採用市場や技術トレンドの動向について解説しました。
IT業界というのは変化の早い業界であり、1年1年で違う顔をみせ、人気となる技術やスキルも変わってきます。
これからIT業界を目指す方は、採用を勝ち取るためにも、「いまIT業界はどのような状況にあるか」、「社会や企業はITエンジニアに対して何を求めているか」など、IT業界のいまをよく知ることが大切です。
とくに2023年は、AIやメタバースなどにより、大きなトレンド変化がおきる年ともいわれていますので、IT業界を目指す方は動向をチェックしておきたいところです。