ITパスポートを受験したいけれど、難易度の面で不安を感じている方もいるのではないでしょうか。「文系学生だから不安」「IT系とは無縁の仕事をしてきたので不安」など、一歩が踏み出せない方もいるかと思います。
ITパスポートは勉強が必要ではありますが、実はそこまで難しい試験という訳でもありません。
そこで今回は、ITパスポートの難易度や合格率、また文系学生やIT未経験者が受験する上での合格事情について解説します。
ITパスポートの難易度
「ITパスポート」は、経済産業大臣が実施する国家試験「情報処理技術者試験」のうち、最も難易度が低いスキルレベル1のエントリー試験となります。ITに関する技術知識も問われますが、レベル的には基礎的な内容となります。
- スキルレベル1:ITパスポート試験(IP)
- スキルレベル2:基本情報技術者試験(FE)
- スキルレベル3:応用情報技術者試験(AP)
- スキルレベル4:ITストラテジスト試験(ST)、システムアーキテクト試験(SA)、プロジェクトマネージャ試験(PM)など
ITパスポートの立ち位置について、運営側からは「ITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべき、ITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験です。」と明示もされており、学生や非IT系の社会人でも合格しやすい難易度となっています。
合格率は?
具体的な合格率も見てみましょう。
直近、令和4年4月度~令和5年2月度におけるITパスポートの合格率は、以下のようになっています。
合計:50.8%
学生:38.3%
社会人:54.0%(うちIT系社会人が52.4% 非IT系社会人が54.5%
参考:ITパスポート公式サイト「ITパスポート試験 試験結果」
ご覧のように全体の合格率は50.8%となり、約2人に1人が合格している難易度です。
注目したいのは、社会人の合格率のうち、非IT系社会人の合格率が54.5%となっている点です。IT系社会人の合格率52.4%よりも高い数値です。これはIT未経験の人であっても、努力して勉強すれば十分合格が狙えることを意味します。
なお、IT系社会人の合格率が非IT系社会人よりも低いのは、推測ではありますが「IT系で働いているからあまり勉強しなくても大丈夫」と安易に考えた結果であるかもしれません。ITパスポートの難易度はさほど高くはありませんが、だからといって勉強なしで合格することは難しいのです。
繰り返し受験できる分、難易度は低め
ITパスポートは、CBT方式(Computer Based Testing)を採用しており、コンピュータ上で受験が行われます。全国各地の会場で原則毎日実施されており、試験日に決まりはなく、好きな日に受験できます。
また受験回数に決まりはなく、不合格となっても、繰り返し受験が可能です。他の国家資格試験のように年に数回しか実施されていない訳ではなく、好きな日に繰り返し受験できるので、挑戦できる回数が多い分、難易度は低めといえます。
ただし、受験は何度でもトライできますが、一度の受験で7,500円(税込み)の受験料が発生することは覚えておいて下さい。
文系学生や未経験者でも本当に合格できるのか
前述した合格率の通り、文系学生や未経験者(非IT系社会人)であっても、ITパスポートは約2人に1人が合格しています。ただし裏を返せば2人に1人が落ちているので、誰もが合格できる訳ではありません。
ここでは、文系学生や未経験者が受験した場合の事情について、深堀していきます。
180時間程度の勉強が必要
ITパスポートは情報処理技術者試験の中では最も簡単なエントリー試験となりますが、まったくの無勉強で合格できる試験ではありません。
勉強時間の目安としては以下となります。
- 約180時間・・・まったくIT知識がない人(文系学生、IT未経験者など)
- 約100時間・・・ある程度IT知識がある人(情報系の学校に通う学生、IT系の仕事をしている社会人など)
- 数時間~数十時間・・・ITエンジニアとして働いている人
文系学生や未経験者など、IT知識が乏しい人ですと約180時間の勉強が必要となります。
ITパスポートは、多肢選択式(四肢択一)の試験ですが、計100題出題されますので、「運」や「まぐれ」は通用しません。参考書や過去問題集などを使い、出題されるIT知識をしっかりと覚える必要があります。
プログラミングの出題は少ない
「プログラミング」は向き不向きが出やすい分野です。特に文系学生や未経験者ですと、つまずくことが多いです。
ITパスポートではプログラミング分野の出題は少なめです。ITパスポート「シラバス6.0」から、プログラム言語(擬似言語)で書かれたプログラム問題が出題されることになりましたが、あくまで数多く出題される問題の一角に過ぎません。
一方、ITパスポートの上位版ともなる基本情報技術者試験(FE)では、午後試験が丸々プログラミングに関する出題となるため、プログラミングの基本を理解していないと合格できない試験となっています。
そうしたことから、ITパスポートは基本情報技術者試験(FE)などに比べ、プログラミングが苦手な人であっても挑戦しやすい難易度といえます。
ビジネス系の問題も多く社会人は有利
ITパスポートの出題範囲は幅広く、テクノロジ系(基礎理論、コンピュータシステム、技術要素)だけでなく、ストラテジ系(システム戦略、経営戦略、企業と法務など)、マネジメント系(プロジェクトマネジメント、サービスマネジメントなど)の問題も数多く出題されます。
ストラテジ系やマネジメント系は、ITというよりもビジネス系の知識に近いです。コンサルティングやマーケティングなどの業務に関わったことのある社会人であれば、すでに知っている知識も多く、難易度が下がりやすいです。
ITパスポートに落ちてしまう人の特徴
ITパスポートの試験は繰り返し受験できますが、それでも一向に合格できない人もいます。
ITパスポートに落ちてしまうのは、主に以下のようなタイプの人です。
- 「ITパスポートは簡単だ」と捉え、ほとんど勉強しない人
- ITに興味がなく、暗記で詰め込もうとする人
- 苦手分野を克服しない人
以降ではそれぞれのタイプについて深堀します。
「ITパスポートは簡単だ」と捉え、ほとんど勉強しない人
ネット上などには「ITパスポートは簡単」「誰でも受かる」のような声も溢れていますが、真に受けてしまいまったく勉強しないで受験すると落ちます。たとえ現役のITエンジニアであっても勉強時間ゼロでの合格は難しい試験です。
あまり安易に考え過ぎないようにし、地道に勉強することが大切です。
ITに興味がなく、暗記で詰め込もうとしている
ITに対して関心を持たず、「ただ180時間勉強する」「丸暗記で詰め込む」ようなタイプの人も落ちてしまうことが多いです。
ITパスポートは範囲が広く、問題の切り口も毎回変わるため、応用力が重要になります。興味関心をもつことで知識と知識がつながっていき、応用問題や変化球のような問題にも対応できるようになります。
流されるように勉強するのではなく、「これはどうなっているのだろう?」とITに対して興味を持ちながら、頭に入れることをおすすめします。
苦手分野を克服していない
ITパスポートの合格基準は、以下のようになります。
総合評価点:
600点/1000点満点
分野別評価点:
テクノロジ系 300点/1000点満点
ストラテジ系 300点/1000点満点
マネジメント系 300点/1000点満点
単に総合評価点の600点を越えるだけでなく、テクノロジ系、ストラテジ系、マネジメント系それぞれで300点以上を満たしていないと不合格となります。このため、いくら得意な分野で点数を伸ばしても、苦手分野を克服しないと不合格となることがあるのです。
特定の分野だけに固執せず、苦手な部分もしっかりと理解しておくことが、合格への近道となります。
IT未経験者でもしっかりと勉強をすれば合格できる
以上、ITパスポートの難易度について解説しました。
ITパスポートは国家試験ではありますが、難易度はさほど高くはなく、繰り返し受験もできますので、文系の学生やIT未経験者であっても合格できる余地は十分あります。
ただし未経験者の場合、1日2時間勉強するとして約3か月程度(約180時間)の勉強が必要となります。繰り返しとなりますが、勉強をせず「たまたま」合格できる試験ではありませんので、勉強計画を立て、毎日地道に学習を進めていきましょう。