未経験からITエンジニアを目指している方の中には、この仕事の「将来性」について不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
これからエンジニアになったとして、10年後20年後の将来、果たしてほんとうによい仕事人生をおくることができるのでしょうか。
今回は、未経験エンジニアの将来性について解説します。
ITエンジニアの将来性について
10年後20年後のITエンジニアに未来はあるのでしょうか。まずは、ITエンジニアやIT業界全体としての将来性について解説します。
ニーズは拡大し人手不足も進む
経済産業省が平成28年に公開した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」では、IT業界の将来予測について掲載されています。
具体的に、IT市場はITニーズの拡大によって今後も拡大を続けることが見込まれており、2030年には約59万人(中位シナリオの場合)ものIT人材が不足する予測が立てられています。
現在もIT業界では慢性的なエンジニア不足に悩まされていますが、今後はそれが加速し、今以上にエンジニアが足りない社会となる可能性が高いのです。
深刻化するIT人材不足に対して、以下のような人材を取り入れていこうとする動きすら進んでいます。
- 50代以上のシニア層(シニアIT人材)
- 女性
- 外国人労働者 など
こうした人手不足の状況は、エンジニアからすれば売り手市場となりますのでプラス要素となります。未経験のエンジニアであっても、人手不足による恩恵は今後よりうけやすくなる可能性が高いでしょう。
働き方の面でも将来性あり
政府の進める「働き方改革」などにより、転職、副業、リモートワークなど新たな働き方へシフトしていく動きが強まっています。
一つの会社で定年まで働く終身雇用の考え方は過去のものになりつつあり、今後はより自由な働き方のできる社会になっていくともいわれています。
ITエンジニアは、技術が武器となる仕事でもあるため、そのような次世代の働き方との相性も比較的良いです。
フリーランスとして独立もしやすい職種であり、肉体労働でなく頭脳を使う仕事であるため、努力次第では高齢になっても続けることも可能です。
AIに代替されにくい職業である
近い将来、現在ある多くの仕事が、AI(人工知能)やロボットに代替され、人間の仕事が奪われるとも危惧されています。
しかしITエンジニアの仕事は、人間ならではの思考やコミュニケーション力なども必要になるため、AIの力では賄えない部分もあり、AIに代替されにくい仕事ともいわれています。
総務省が発表した「令和元年版情報通信白書」では、「AIによって代替される可能性が低い職業」として、管理、経営、金融、コンピュータ、工学などが挙げられています。
反対に「AIによって代替される可能性が高い職業」として、運輸、輸送、事務、生産工程、サービス、営業などが挙げられています。
ただしプログラミング作業や設定作業のようなパターン化できる作業は、AIに代替しやすい部分であり、むしろAIのほうが人間より優れているという見方もされています。
さらに未来は?
AIの技術進化は未知数な部分もあり、2045年には技術的特異点(シンギュラリティ)に到達し、AIの能力が人間を大きく凌駕するとも考えられています。
そのようにAIが驚くべき進化を遂げた場合においては、ITエンジニアが活躍できる場も狭められる可能性はあります。
未経験者が将来を考える上での注意点
前述のとおり、ITエンジニアやIT業界は将来性の明るい面も多いです。
ただし既卒の未経験からITエンジニアになる人、ある程度年齢を重ねてからITエンジニアになる人の場合は、将来を考える上で頭に入れておきたい注意点があります。
同年代と年収に差が生じることもあり
新しいイメージのあるIT業界ですが、旧来の年功序列型、経験年数や入社年度などに応じて給料を決める仕組みがいまだ根付いている会社も少なくありません。とくに、Sler(システムインテグレータ)系の会社などはそのような会社が多いです。
したがって、一度社会に出てから既卒の未経験者として入社した社員と、新卒でストレート入社した同年代の社員では、基礎能力がまったく同じであると仮定した場合、年収差が生じてしまうことがあります。
もちろんITエンジニアは技術が武器となる職種でもありますので、素早くスキルや実績を積めば、スピード昇進できることもありますが、それには相応の努力とセンスも重要になってくるでしょう。
いつまで仕事を続けられるか
ITエンジニアは肉体労働ではないため、50代60代もしくはそれ以上の高齢になって続けることも、究極的には不可能ではありません。
しかし、ITの技術は日々進化しており、新しい技術を学んでいかなければなりません。また納期前などは残業なども増えるため、肉体労働とはいかないものの体力勝負の部分もあります。
高齢になると大変な面も多く、実際のところ現場のスペシャリストとして活躍していける人は限られてきます。ある程度年齢を重ねると、現場の第一線から引き、マネジメントのポジションに移行していく人も多いです。
既卒で30代40代からITエンジニアを目指す人は、こういった年齢的な課題と直面することも増えますので、自分がいつまで続けられるかも含め将来を考えたいところです。
経験の乏しいエンジニアは肩身が狭くなる未来
現状、IT業界は人手不足を抱えており、猫の手も借りたいような現場も少なくありません。そのため、未経験のエンジニアにも需要があり、エンジニアを目指す意欲があるだけでも歓迎してくれる会社もあります。
しかし将来的には、未経験者が行うような簡単な作業はAIに代替される可能性があります。また近年は小学生からプログラミング授業などが取り入れられており、今後にはITリテラシーの高い人材が多い社会となる可能性もあります。
そうなった場合、未経験者や、薄い経験やスキルしか持たないエンジニアというのは今よりも価値がなくなり、肩身が狭くなる恐れがあります。
淘汰されずに新たな時代も活躍していくためには、未経験入社後、流されように働くのではなく、エンジニアとしての確たる経験を積み、将来に備えておくことが大切です。
ITエンジニアは将来性のある職業
前述したような注意点もいくつかありますが、総合的にみればITエンジニアはこれから先も将来性のある職業といえます。
ITエンジニアの将来を左右する最大の焦点は「ITテクノロジーの社会的な需要がどこまで続くか」です。ITエンジニアはITを作りあげることが仕事であるため、社会がITを求め、ITの開発、運用、保守の案件がある限り存続します。
20世紀末のIT革命以降、社会のあらゆる部分へITの導入が進み、ITエンジニアの需要が急速に高まりました。
そして10年20年がたち、絶頂期を迎えたかとおもえば、スマートフォン、AI、ロボット、IoTなど新たなIT技術が続々と登場し、それに伴い新たな仕事も生まれてきています。
時代によってトレンドとなるIT技術は変わっていますが、ITの需要そのものは増えており、今後もIT業界は拡大するという見方もされています。
その時代にあった立ち回りができるか
以上、ITエンジニアの将来性について紹介しました。
極端な話ですが、10年後20年後、そしてさらに遠い未来においても、人や社会が、ITやコンピュータに依存している限りは、ITエンジニアという仕事は形を変えながらも存続していくことでしょう。
ITエンジニアとして働く側も、長く活躍してくためには、その時代にあった立ち回りができるかが重要になります。