グローバル化が進む中、ITエンジニアにも「英語力」が問われるケースが増えてきました。
採用においても、英語力の有無を図るためTOEICスコアが見られることもあり、ITエンジニアとしてのキャリアアップのためTOEICを受験する人も増えています。
ここで疑問となる点ですが、なぜITエンジニアに英語力が必要になるのでしょう。
今回は、ITエンジニアとTOEICや英語力との関係について、その事情を解説していきます。
ITエンジニアはTOEICで何点必要?
まず、ITエンジニアとして働く場合、TOEICのスコアは何点を目指せばよいのでしょう。
ここでは、ITエンジニアとTOEICについて解説します。
TOEICとは?
TOEICは、アメリカの非営利団体ETSが運営する世界共通の英語試験です。正式名称は国際コミュニケーション英語能力テスト(Test of English for International Communication)。スコア制を採用しており990満点です。
TOEICは細かくは5種類に分類されますが、一般的にTOEICと扱われるのはそのうちの一つ「TOEIC Listening & Reading Test」の試験です。この試験で高スコアをとると、文字通り英語のリスニング力、リーディング力が高い人材として評価されます。
ITエンジニアに必要なTOEICスコアは700点が目安
厳密に定められているわけではありませんが、一般的にITエンジニアに必要なTOEICスコアは「700点以上」が望ましいとされることが多いです。
後述もしますが、ITエンジニアは英語のドキュメントやツールを利用することも多く、英語と近い位置にある職種でもあります。
特に英語のリーディング力は使いどころが多いです。マニュアルやエラーコードの読解などでも用いるため、TOEICスコア700点以上のリーディング力があれば心強いといえます。
TOEICスコアの就職への影響
採用条件に「TOEICスコア〇〇点以上」が明記され、TOEICスコアが直接就職に影響する会社もあります。
たとえば大手求人情報サイト『リクナビNEXT』にて、「TOEIC700点以上」を条件としているIT求人を検索すると、以下のような仕事がヒットします。
TOEIC700点以上を明記している求人の例:
・ITヘルプデスク
・物流システムのIT保守
・ITコンサルティング
・セキュリティエンジニア
・システム部 管理職
・プロジェクトマネージャー
・クラウドバイリンガルエンジニア
など
「ITヘルプデスク」や「IT保守」などの職種は、英語力が問われる職場が意外と多めです。
また「ITコンサルティング」「管理職」「プロジェクトマネージャー」のような職種も、上流工程となり顧客折衝や会議など対話をする機会が多くなるため、英語力が重視される傾向が見られます。
ただし、以上のような職種が、すべての会社でTOEIC700点以上を求めているわけではありません。同じ職種であっても、その会社の扱っているITサービス、社内の公用語、メンバー構成(海外国籍のエンジニアが多いかなど)によっても英語力の重要性は変わります。
ITエンジニアになぜ英語力が求められるのか
ITエンジニアは、ITシステムを作ることが役目となる職業ですが、そこになぜ英語力が関わってくるのでしょう。
ここではITエンジニアに英語力が問われる理由や背景について解説します。
英語のドキュメントやツールを利用することが多い
ITエンジニアが利用するドキュメントやツールには英語表記のものが少なくありません。
- 英語表記のマニュアル
- 英語表記の技術書
- IT機器(ネットワーク機器など)の多くは英語仕様
- プログラミング言語は英語がベース
- データベースソフトや監視ソフト等のミドルウェアにも、操作画面などが英語表記となっているケースが多い・unixやlinux系のOSでは、コマンド操作時に英語を多用 など
ITエンジニアが利用するツールやソフトの中には、操作画面が英語であったり、マニュアルが英語版しか用意されていないものもあります。
また海外の最新のIT技術情報やIT製品のリリース内容などは、英語でしか発信されてないこともあるため、英語のリーディングスキルがあるのとないのでは、知識の吸収スピードが変わってきます。
日常的に使うIT用語にも英語がベースとなっている言葉が多いため、英語力があったほうが何かと便利な業界といえます
エラーの内容は英語で表示されることが多い
システム開発・改修や障害対応等を行っている中で、エラーが発生することは避けられないでしょう。
その際に、画面上で返されたエラーを読解することや、別途出されているエラーログの中身を確認しながら、エラーを解消していくことが多くあります。
画面上のエラーやログの内容については、英語で表記されているものが多いため、わざわざ意味を調べずともパッと見て何を指しているかわかれば、エラー解消にかかる時間が削減できるでしょう。
そのため、英語力があった方が、より効率的に業務を進めることができるというリットがあります。
グローバルな環境のIT企業も多いため
IT企業にはグローバルな環境の会社も多いです。国内のオフィスであっても、大きな企業であれば、アメリカ、インド、アジア出身の海外エンジニアが働いてる会社もあります。
特に外資系のIT企業の場合は、本体が海外のため、社内の公用語が英語であったり、社内資料の多くが英語表記であることもあります。そのような環境で働く場合には、必然的に英語力が問われてきます。
また、日本のIT企業であっても「オフショア開発」を導入し、東南アジアなど労働力のやすい地域に拠点をかまえ、委託開発を行っているケースもあります。そういった会社の場合、現地のエンジニアと英語で遠隔会議を行ったり、必要に応じて現地へ出張になることもあるため、対話をする上で英語力が必要となります。
ビデオチャットなどオンラインツールの進化により、海外のエンジニアと連携をとる機会も増えているため、今後はコミュニケーションをとる上で英語力がより問われてくることでしょう。
就職する上で役立つ
TOEICのスコアが高いほどエントリーできる企業の数も増えます。実際に「TOEIC700点以上」、「TOEIC800点以上」とスコアを採用条件に設定しているIT企業もあるため、スコアが高いほど就職先の選択肢が広がることを意味します。
また、近年はIT業界でない企業(メーカー、商社、金融機関など)でも、社内ITシステムの管理やITを使った新規ビジネスの要員として、ITエンジニアを採用するケースが増えています。
メーカーや商社などは、IT業界以上にTOEICスコアをシビアにみる会社も多いですので、将来的にそういった他業界の企業へITエンジニアとして転職を試みる場合、TOEICのスコアは武器となってくれることもあります。
英語力だけでなく技術力も大事
ITエンジニアも、英語力があったほうが有利です。
ただしエンジニアである以上、さらに重要になるスキルは「技術力」です。
たとえばプログラマーであればプログラミング能力、インフラエンジニアであればサーバーの知識や構築スキルといったように、それぞれの職種で必要となる基礎的な技術力があります。
英語力だけ高くとも、プログラミングの知識や経験のないプログラマーは、プログラマーとしては喜ばれません。
ITエンジニアは覚えるスキルや知識が莫大にありますが、一人の人間が勉強に費やせる時間は有限です。したがって習得するスキルに優先度をつけ、自分の目指すキャリア上、必要性の高いスキルから身に着けていく意識も大切です。
英語力があまり必要とされない職場もある
余談ですが、英語力があまり必要とされない職場もあります。
たとえば、Slerで働くITエンジニアの場合、省庁や市役所など行政機関のシステム開発を担当することもあります。そうした案件では、顧客となる行政機関先に常駐して働くこともありますが、市役所などはやはり日本人の職員が多く、関連書類等も日本語ベースであるため、英語というのはあまり使わないことが多いです。
そのように勤める企業や担当する案件によっては、英語力があまり求められないケースがあるということも覚えておきたいところです。
TOEICや英語力はエンジニアとしての活躍の幅を広げる
以上、ITエンジニアとTOEICや英語力について解説しました。
すべてのIT企業で英語力が問われるわけではありませんが、社会全体でグローバル化が進む中、英語力が問われる企業や職場はIT業界内でも確実に増えてきています。
そうした中、TOEICスコアは、自身のもつ英語力を対外的にアピールできる材料となりますので、就職や転職、出世などでプラスに働くことも期待できます。
海外の最新のIT情報を調べる、英文のエラーコードを解析するなど、英語力は普段の実務でも役立つことが多いので、エンジニアとしての活躍の幅を広げる意味でも、TOEICスコアや英語力を磨く価値はあります。