ITパスポートは、ITにかかわる基礎的な知識を証明する国家試験です。合格率だけを見てみると、情報処理技術者試験のなかで比較的難易度が低いことで知られています。
一方で、IT知識のみならず企業活動や経営といったビジネス寄りの内容も出題されるので、合格するためにはポイントを抑えてきちんと対策する必要があります。
この記事では、ITパスポートの必要性と合格率、合格のポイントについて解説します。
未経験のエンジニア転職にITパスポートは必要?
ITパスポートとは、国家試験である情報処理技術者試験の中の1つであり、対象は「ITを利活用する者」かつ「すべての社会人」とされています。
問われる内容は「職業人が共通に備えておくべき情報技術に関する基礎的な知識」であり、社会人としてITを利活用した経験がある人であれば比較的難易度が低い試験であると言えます。
ITパスポートの必要性
未経験からITエンジニアを目指す人がITパスポートを持っていれば、以下のような評価を得ることができます。
- ITエンジニアとして最低限必要なIT知識やスキルを有している
- 未経験からのエンジニア転職でも「学習しようという意欲」を持っている
エンジニア転職においては、人柄やコミュニケーション力はもちろんですが、過去の実績が大きなウェイトを占めています。しかし未経験ではアピールできる実績がありません。
そこで、「実績はないけど、ITパスポートを独学で受験しました!」という「前のめりの学習意欲」をアピールすることが重要なのです。
もちろんITパスポートを持っているから転職に成功するわけではありませんが、実績がないというハンディキャップを埋める方法の1つとして、取得しておくことをおすすめします。
ITパスポートにはエンジニアの入門知識が詰まっている
ITエンジニアにとって資格とは、「個々のエンジニアがどのようなスキルを有しているか」を証明する指標でしかありません。
ただし、ITパスポートで出題される内容は、エンジニアが開発を行う上で必要な入門知識が詰まっています。そのため、未経験からエンジニア転職を果たし、いざ開発現場に出た際には大いに役立ちます。
ITパスポート取得のために学習しておくだけでも、損はないでしょう。
ITパスポートの合格率は?
ITパスポートの合格率について見ていきましょう。
ITパスポートの合格率
令和4年度(2022年4月~8月)のITパスポート合格率は、54.4%という結果になっています。遡って令和3年度が52.7%、令和2年度は58.8%、令和元年度が54.3%となっており、ITパスポートはおおむね50%前後の合格率であることがわかります。
つまりITパスポートは、応募者の2人に1人が合格する計算になります。この合格率は、国家資格試験としてはかなり高いと言えるでしょう。
比較のために補足すると、同じくIT系国家資格である基本情報技術者試験の合格率は22~27%程度、プロジェクトマネージャ試験は13%程度です。
ITパスポートの試験内容
ITパスポートの試験は、120分間で小問100問をCBT(Computer Based Testing)方式で回答します。受験者はコンピュータでマウスやキーボードを用いて回答を行い、出題形式は4肢択一式、つまり4つの選択肢から該当するものを選択します。
CBT方式の試験の受験が終わると、試験画面に試験結果レポートが表示され、すぐに結果が分かる仕組みになっています。後日ITパスポート公式サイトからダウンロードすることも可能です。
出題分野は3つあり、「ストラテジ系(経営全般)」が35問程度、「マネジメント系(IT管理)」が20問程度、「テクノロジ系(IT技術)」が45問程度、総合評価1,000点のうち何点取れるかによって合格か不合格かが決定します。
採点基準はIRT(Item Response Theory=項目応答理論)を用いて評価点が算出されます。
なお、身体が不自由である等の理由でCBT方式の受験が出来ない人を対象に、春期(4月)・秋期(10月)に筆記試験も実施しています。
ITパスポートの合格ライン
ITパスポートの合格ラインは、総合評価点が満点の60%、つまり600点以上であり、かつ分野別の評価点も分野別満点の30%以上となっています。
総合評価で600点を超えていたとしても、分野別評価点に達していないものがあれば不合格となってしまうので注意が必要です。
また、問題ごとの点数が均一ではないので、すべての分野で一定の点数を取れるよう対策しておくことが大切です。
ITパスポート合格のポイント
ITパスポートは、対策をしっかり立てて学習すれば合格することはそれほど難しいものではありません。合格するためのポイントをご紹介しましょう。
特定の分野に偏らないように学習する
ITパスポート試験では、「ストラテジ系」「マネジメント系」「テクノロジ系」の3分野から幅広い知識が問われます。
「ストラテジ系」は企業活動や経営戦略、会計・法務といったビジネスの現場で求められる内容が多く出題されます。
「マネジメント系」では、プロジェクトマネジメントやサービスマネジメント、開発技術などが出題されます。近年注目されているアジャイル開発に関することはしっかり学習しておきましょう。
「テクノロジ系」はデータベースやネットワーク、技術要素やコンピュータシステムなどが多く出題されます。利用者向けの試験なので、高度な知識は必要ありませんが、コンピュータに関する基礎的な知識は学習しておくとよいでしょう。
2019年度から出題範囲が拡大され、AIやビッグデータ、IoTといった最新技術の設問が強化されています。これらについては重点的に取り組むことをおすすめします。
100問中70問以上の正解を目指す
ITパスポートで合格するためには、総合評価点600点以上が必要です。
採点は1問10点ではないので、合格ラインを高めに設定して学習することが大切です。目安として100問中70問以上正解できることを目指しましょう。
過去問題を解く
学習を一通り終えたら、参考書や公式サイトにある演習問題や模擬問題に挑戦して対策を進めましょう。試験範囲や試験内容は少しずつ変更が加わっているため、なるべく最新のものから解くようにします。
また、公式サイトでは実際の過去問題を使ったCBT方式の疑似試験を無料で体験することができます。CBT方式に慣れるために、必ず試験前に試しておきましょう。
新しい出題範囲(シラバスVer.4.0~6.0)の対策をする
日々変化するIT最新技術を反映させるため、ITパスポートには新しい出題範囲が続々と組み込まれています。
2019年度からシラバスVer4.0、2021年度からシラバスVer5.0、さらに2022年度からシラバスVer6.0が適用されています。
具体的には、近年の新技術であるAIやIoT、AIやIoTを構成する技術の名称や役割、情報セキュリティ分野などが含まれます。特に情報セキュリティ分野は比重が高い傾向があるため、重点的に学習しておくとよいでしょう。
合格率の高いITパスポートを取得して転職活動で実績としてアピールしよう
ITパスポートは合格率の高い国家資格試験です。あらかじめ独学で学習して対策をしっかりしておけば、合格することは難しくありません。
ITの基礎学習の一環としてITパスポートを取得し、転職活動で実績としてアピールしましょう。
「ITパスポートを転職活動でどう活かせばいいの?」とお悩みの方は、ぜひ一度お問い合わせください。